女王様にはかなわない!
何を勘違いしてるのか、自分よりキャリアも年齢も上のコンサルタントやエンジニアを怒鳴りつけて、自分の存在を誇張しているかのようなドームの横暴ぶりは、日々進化していた。
何様のつもりか、ヒステリックに怒鳴り続けるその姿はどこか滑稽で、怒鳴られている人達には申し訳ないが、その内容とは裏腹に周囲の失笑をかっていた。
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それほど彼女が彼らを怒鳴る事は、その能力やキャリアに見合っていなかったのだ。
と同時に、周囲はどうしてあんな「ガキんちょ」に仕切られて、働き盛りの彼らが黙って我慢しているのか、歯痒い気持ちでいた。
ところが、人間イイ気になってると、ろくな事はないと証明される事件が起きた。
ベテランエンジニアのTさんがキレたのだ。
初登場の彼については少し説明が必要だが、エンジニアのイメージ通り、寡黙で真面目に黙々と仕事をこなし家庭もきちんと大切にし、目立たないがその技術力と勤勉さは会社にとって大いなる財産になっている。
そんな彼は、一緒に怒鳴られているコンサルタントのKさん(以前登場した、女王様が監禁までした大好きな男性)の、真面目に仕事に取り組む姿勢を尊敬しているようだったので、自分はともかくKさんを頭ごなしにバカにし切って怒鳴りつけるドームを許す事ができないらしかった。
「システムの事を何も分からないのに、いい加減にしてくれ!」と彼にしては精一杯、でもどこか弱々しい声で言い放ったのだ。
いつも物静かで黙々と仕事をこなし、ドーム的には「存在感の無い」Tさんがキレた事には、流石のドームも驚いたらしく一瞬無言になったが、逆ギレした彼女はヒールをイラついた音でコツコツ言わせながら、コンサル部リーダーのじーじの元へ向かった。
事の顛末を興味深く見守っていた私達は、Tを応援しながらもドームの逆襲がどんなものか心配だった。
でも流石にドームにデレデレしているじーじも、最近のドームの横暴振りには辟易していたようで、その言動を注意したらしくこの後、Tさんがキレた一連の事件は表立っては語られず、次の日からドームの怒鳴り声も鳴りを潜めた。
しかし、ある意味ドームを見直す事実を私達が掴んだのは、彼らを怒鳴る事で自己の存在をアピールし、ついでにストレス解消もしていた彼女が新しく「おいしい仕事」を見つけた直後だった。
ある朝、Yと私は一緒に会社のエレベーターで、閉まりそうなドアを無理矢理開けて飛び込んできたドームと一緒になったのだが、あまりの驚きに朝の挨拶も忘れてしまった。
それは、前から何故だか他のコンサルメンバーより1泊多い出張をしていたドームが出張に出発する朝だったのだが、ただでさえ厚化粧の彼女がより一層「塗りたくって」いた上に、今時「on the 眉毛」の前髪にチークはまったく「おてもやん」、しかも数年前のスーツを着てるもんだから、どっかの若作りのおばちゃんのようないでたちで、ご丁寧にキッツい香水のおまけ付だった。
たぶんポカンと口を開けてた私を横目にYがやっとの思いでドームに「イ・・イメチェン?」と訊くと「え~っ・・」とガラにもなくはにかみを見せたが、どう考えてもドームはイカしてると勘違いしてるのは明らかだった。
そのまま意気揚々と席に着くと、果たして周囲の人は「どうしたの??」と、ギョっとしながらも訊いていたが、ここでもドームは「やっぱり私って人目をひく可愛さなのね」と勘違いしまくっているようで、ニッコリ微笑んだりしていた。
ところでドームの「おいしい仕事」だが、社内の人も自分を見くびっている、唯一の頼みの綱のじーじさえ自分を庇いきれない。
キャリアや知識もなく人間的にも人気の無い彼女は、プロジェクトの基幹とも言える顧客を取り込む作戦に出た。
A社の中でこの当時羽振りのいい部と言えば、なんと言ってもコンサルだったが、そこである程度の地位を保とうとすれば何としてもプロジェクトの、しかも金額の大きい、できれば難しいものに関わっているのが最低条件だったので、平たく言うと顧客のシステム責任者と関係を持ち、自分をシステム担当に加えてもらったのだ。
まったく汚らわしい勘違い女だがすぐ男を取り込む手腕と、そこまでする仕事への執着心には、ある意味感心するのも確かだった。
どうやら彼女の自称「イメチェン」は、その相手へのアピールの為にしている事らしかったが、日々みんなが自分をうっとり見つめているという自己満足に浸っていた彼女をあきれ返って観察していた周囲の人々は、ある日の女王様の一言で溜飲を下げた。
「あら、イメチェン?あなた髪型も顔もヘンよ」と真面目な顔であっさり言ってのけたのだった。
もう私達を含め周囲の社員は笑いを堪えられず、思い出しては噴出し・・の繰り返しでその日は仕事にならないほどだったが誰よりも笑いが止まらず喜んでいたのは、KさんとTさんである事を考えると、私達はこの時ばかりは女王様に拍手喝采を送ったし、いくら偉そうにしてもドームごときが女王様に太刀打ちするのは無理な事だった。
しかし、本当にいつもドームが自慢しているように、電話1本ですぐ駆けつけてくれる弁護士や医者が周囲にたくさんいるなら身体を張ってまで仕事にしがみ付く必要はないと思うんだけどね・・・・。
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