大事件勃発
いつまでも「女の子ちゃん」を気取る女王様の大本命、Kさんは女王様の気持ちを知っててさり気なく付き合ってるのか、はたまた本当に気付かないのか、傍から見ていると「これ以上無い」ほど適切なスタンスで女王様とビミョ~な距離を保っている。
しかも、それが全く計算されたものでなく自然体でできるものだから、女性陣の人気は高まるばかりだった。
女王様もそんなKさんに誠実さを見ているらしく、夜のお付き合いがなくても、よいしょされなくても、変わらない態度で接する唯一の相手のようだった。
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そんな女王様を観察していたYと私は、女の子ちゃん扱いされる事や、褒め称えられる事は大好きな女王様が、どんなに出世してもそこは普通の女性であり人間なので、本当は「人として」尊重しあいながら付き合える相手を必要としているのを見抜いていた。
A社の殆どの人は女王様の顔色を伺って言う事を決めたりして点数稼ぎに余念が無いが、Kさんだけは自分の信念に沿って発言し、たとえそれが女王様の意見と違っていても納得するまでディスカッションするものの、決して険悪な状態にならないという、稀な男性だった。
女王様の男性の好みの中に「センター分け」、つまり髪の分け目が真ん中でサラサラヘアの人というのがある。
同棲しているSさん、社内のお気に入りであるコンサル部リーダーのじーじ、中途入社のSさん、取引先のおエライさん・・・と言われて見れば全員センター分けだが、中でも最もトラディッショナルなセンター分けをしているのがKさんだった。
そのせいだけではないと思うが、とにかく女王様は哀しいほどKさんが大好きなのだった。
そのKさんを悲劇が襲ったのは、A社お得意の大手製薬会社のプロジェクトも佳境に入った頃だった。
仕事の特性上ミーティングが多く、しかも長時間に亘るのはある意味当たり前で、それが深夜に及ぶ事も珍しくない。
でもこの時ばかりは異常事態だった。 なんと女王様は「最重要課題のミーティング」と銘打ち、Kさんと2人で夕方からミーティングルームに籠ったのだが後でKさんがこぼしたところに拠れば、それは朝5時過ぎまで、ほぼ半日続いたそうである。
私達はあまりの事態に驚きKさんに同情もしたが、はっきり言ってちょっぴり興味本位になるのはどうしようもない事で、つい探りを入れたところでは、大の男と女が1つ部屋に半日籠っていても、何事も起きなかったそうである。
もちろん会社のミーティングルームという場所柄もあったと思うが、女王様がこれを好機と捕らえていた事は想像に難くないだけに、その必死さが益々女王様を可哀想で寂しい女性に思わせたし、Kさんのあまりの真面目さが歯痒い気もした。
しかし、考えてみればKさんは立派な妻子持ちであり、女王様がSさんと住んでいる事は周知の事実であったのでKさんが妙な事に巻き込まれて家庭にヒビを入れたくないと考えるのも当然なのかもしれなかった。
ただ、女王様があまりにも堂々と男性を口説くものだから、ついうっかりその野望の行方を見守ってしまうという感じだった。
こうして女王様最後の賭けも不発に終わり、流石に女王様もKさんを我が物に・・・という妄想から覚めたようでそれ以降、Kさんの上に陽が当たる事はなく、行く末を案じたのかKさんは1年後に退職した。
その送別会の席でKさんの近くに座った私達は、如才なく楽しそうに飲み食べしているKさんを横目に、女王様とKさんが会う事はもう2度とないだろうな・・・と確信していた。
しかし、これらの事が全てKさんが描いたストーリー通りだとしたら、Kさんもなかなかやるものである。
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