女王様の悲哀
いくつになっても、社長になっても「可愛いコちゃん」ぶるのが大好きな女王様は、誰もが認める男好きで守備範囲もかなり広いが、そんな彼女にも好き嫌いがあるのは当然だった。
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彼女が気に入っている男性は、内容的に美味しいプロジェクトにアサインされ、地位や年収も自然と上がる仕組みとなっていて、勿論これには泊りがけの出張や夜のお相手も含まれる場合が多く、日常的に彼女を「女の子扱い」するのは不可欠だった。
ところが、これを全くしないのに女王様の一番お気に入りの男性が存在した。
彼はコンサルの元マネージャーで、何事に対しても真面目に取り組み人当たりもいいが、仕事や礼儀などの件でおかしいと感じる事があれば、ハッキリ物を言う、所謂「一本筋の通った」人であった。
外見は中肉中背だが、高校球児だったというだけあって肩幅など広くガッチリしているし、奥様のおかげと思われるがいつもパリっとしていた。
折り目正しく女性には殊の外優しいが、決してデレデレしないところが女性にウケて「結婚するならKさんのような人」と女性達から言われているタイプであった。
何事につけても女王様はKさんに相談という名目で近付き、何とかして特別な関係に持ち込もうと必死なのは見ていて哀れなほどだった。
もちろん女王様は立場上、仕事の話で近付くのだが、その魂胆を知ってか知らずか、その都度Kさんは生真面目に応対し、結果として女王様に付け入るスキを与えないのだが、これが女王様には歯痒い事この上ないらしい。
実際、彼女はトップコンサルのSさんと永らく不倫関係にあるのだが、どうしてもKさんの事も気になるらしくアピールは続いた。
外資なのでもちろん本社は海外にあるのだが、本社で各国の代表が会議をする出張に、なんと社費を使ってKさんを伴った。
その出張の詳細は分からないが、Kさんから聞いたところによれば女王様は終始上機嫌で、会議も日本支社に優位なものとなり、驚くべき事には、得意の英語でイヤミまで言い放ったという。
女王様の秘書も兼任していた私はある日彼女からの電話で、滅多に誰も近付かない女王様の机で探し物を頼まれた。
急ぎの用だったので電話をしている間は必死だったが、終わってふと机を見渡した私は、そこで見つけたものにドキドキした。
絶対に座っている人からしか見えない巧妙な位置に、ロンドンで撮ったと思われる、Kさんと腕を組んで満面の笑みを湛えている女王様の写真を発見したからだった。
それは本当に今まで見た事も無いほど楽しそうな女王様であり、その腕は執拗に捲きつくヘビの如くKさんを捕らえている。
自分には何の関係もないのに、何だかとても罪の意識を感じ、私は慌てて転びそうになりながら急いで女王様の席から脱出した。
私は何だか女王様が可哀想になった。 その世界では有名人で、講演会をすれば何万円もの券があっという間に売れ、著書も多い。
マンションを3つ所有し億単位の年収を稼ぎ、着ている物はアルマーニを始めとするブランド品という、人も羨むプチセレブだ。
なのに一番手に入れたいものは入らない。
でも今日も女王様は一生懸命仕事をし、その合間にKさんに色目を使い、Sさんと住んでいる。
公私共に何とも忙しいのだが、彼女の心には風穴が空いているに違いない。
そう考えると、ちょっと甲高い声も、せかせかした話し方も、仕事中にヒステリーを起こすのも仕方ないような気がして彼女の意味不明の要求にも応えて見ようか・・って気になるのだった。
Kさんへの執着はかなりなもので、この後ちょっとした事件が起きるのだが、それは次回に・・・。
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