彼の演出
営業やコンサルなどと言う職業の人は、大抵会社にいないものである。
シニアコンサルという肩書きの彼も毎日忙しそうに、身体に似合わないほど大きな重いカバンを持って出かけていく。
その後姿は「コンサルはやりがいがあるけど忙しいぜ~。
やっぱりオレが出て行かないとダメだな」と言わんばかりな自信に満ち溢れている。
その日は誰でも知ってる超大手ビールメーカーでのプレゼンが、その後の仕事の行方を決めるような大事な日だったので、いつもにも増して彼は自信たっぷり。
まぁ彼のプレゼンの評価は高いので大丈夫だろうなぁ・・・とみんなは彼を送り出した。
仕事が終わりメーカーから出た彼は、弾んだ声で電話してきて成果を報告。
会社としては喜ばしい事なので、何となくみんな彼の帰りを心待ちにしていた。 夕方。
彼が帰ってきてみんな固唾を呑んで彼の第一声を待った。
自分のプレゼンが会社に多大な利益をもたらす事になりそうだし、そんな自分をみんなは敬うような、憧れのような視線で待っている・・・。
でも彼は考えた。
帰った途端に、さも嬉しそうにはしゃぐと、自分の価値が下がりそうだ・・・。
そうだ!あ~その事??そんなに大騒ぎするほどでもないよ・・くらいのスタンスでいこう!
そして大きな窓に面した自分の席に向かう彼は「西陽が眩しいぜ~」と言いながら例の重いバッグをデスクに置きながら、大きく伸びをした。
小柄な彼が西陽に向かって伸びをしている様は、まったくもって笑える光景で彼が練りに練った演出は、、彼の功績よりも面白さを際立たせる結末となった。
実は彼はとってもイイ&本人は全く気付いてないが感覚的に面白い。
小柄なのに女性と話す時は、壁に手を掛けて身体をナナメにしてみたり、外人をみかけると急にカタカナ用語満載の会話になったり、パープルのYシャツにソフトスーツという今時珍しいバブリーな服装をしたり、タバコに火を点ける時も小首を傾げて足を交差させる徹底振りである。
周囲はどうあれ常に彼的な「カッコ良さ」を、涙ぐましい努力で追求するタイプなのだ。
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