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2007年4月

モテ男もラクじゃないぜぇ~

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西陽と姉さんが付き合ってるという噂は、まことしやかに流れ、聞いた人全員が納得するという、この2人にピッタリの展開を見せた。

要はみんな「あの2人なら・・・」と思ってるわけだ。西陽はいい人だけど、妙に自信たっぷりで女性好き、姉さんに至っては単なる男好きで、ちょっといいと思う男とはコロッと寝る・・・という具合である。

ある意味、大阪支店を仕切ってる状態の姉さんは、仕事はもちろん、出張に関しても勝手気まま・・・まるで個人旅行のように展示会やミーティング、セミナーなどにかこつけて、月に1度は東京に通ってくる。

私は姉さんと話す唯一の女性社員だし、いつも仕事を押し付けられているので、1度くらい食事に誘ってくれても良さそうなものだが、そんな提案は全くなかった。それどころか、彼女が何度も電話で言ってくる、訳の分からない要望をクリアする宿泊先を予約するのに結構な時間を掛けなくてはならない事も多かった。

もちろんそのホテルが西陽との愛の巣になるわけで、知らない間に「社費で不倫」の片棒を担がされている私もとんだ役目を担っていたものである。

どういう訳だか私達は、会社の男性陣にご馳走になる機会が多かったが、西陽はその筆頭で彼は、勿論足を交差させながら「何のメリットも無いのに食事ご馳走する女性は君たちが初めてだよ」などと髪をかきあげ、あまりコミュニケーションが密とは言えないA社で、本音で語れる相手は君たちだけかもね・・と憂いを帯びた目で遠くを見つめるのが常だった。

ある時、白金に美味しいイタリアンがあると聞きつけた私達は、次の会でそのお店に行ってみた。グルメも自認する彼は「やっぱりイベリコ豚は格別だね」とか「ラムには岩塩が一番合うね」などと独り言のように呟きながら、かなりの量のワインと共に食事を楽しんでいた。

楽しい時間も終わり、会計を済ませた彼は「酔い覚ましに少し歩こうか?」と言い出した。

白金から目黒まで、昼間ならいざ知らず、もうかなり夜も更けているし、女性の足では楽々20分は掛かる道を、冬の季節に歩こうと言うのだ。

明日も会社である事を考えると鄭重にお断りしたい気持ちだが、かなりの額をご馳走になっている身では頷く他、選択肢はない。

道々、暗さとワインのせいで、いつもよりもっと滑らかになった舌は、「この道、彼女と歩いたなぁ・・」と、空に向かって大きく息を吐きながら言い放ち、突然私達を驚かせた。

そして相槌に困って沈黙する私達に、追討ちを掛ける様に「結婚して欲しいって言い出されてさぁ・・ビックリしたよ」と、懺悔か自慢か分からない薄笑いを浮かべながら続けたのである。

愚問と分かっていても「それで何て答えたの?」と訊いてしまった自分を情けないと思いながら答えを待ってると「キミの事は好きだけど家庭を壊す気はないよ、って言ったら泣かれちゃってさ」と、すっかり映画のワンシーン気分で、目黒に向かう並木道を、風に髪をなびかせ歩いている彼を、妄想の世界から引き戻す術は、既に無かった。

何とか駅に辿り着いた私達は、彼が駅の雑踏で現実に戻った事を知って、密かな安心感を感じていた。

ホームに着くなり「トイレに行って来る」と言って、今上ってきた階段を駆け下りたのである。

何だか可笑しな後姿だったが、帰ってくるときは上質なキャメル色のコートのポケットに片手を入れたまま、一段抜かしで階段を駆け上がり「お待たせ」とウィンクする彼を見た私達は、いつ、どんな時でも自分をモテモテ男だと信じて疑わない彼を、つくづく幸せ者だなぁ・・・とちょっぴり羨望の眼差しを送ってしまうのだった。

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恋の予感・・・始まりはゆりかもめ

西陽が自信たっぷりな事は既に書いたが、忙しくて寝る暇もない、とこぼす彼にも女性と付き合う時間はあるらしかった。

彼は背の低さだけがコンプレックスなので、そのテの男性にありがちで、好きな女性のタイプは「華奢な人」、第一印象で目が行くのは顔でも胸でもなく「細い足首」だと言い切っていた。

IT企業であるA社は展示会に出展する事が多いが、その準備や設営は私の仕事で、名目上の責任者が「姉さん」であった。

もちろん彼女は仕事を一生懸命する、なんて気持ちは全くないので結局システム関連の事柄以外は私の仕事になるのだが、このエピソードにその事はあまり関係ない。

ある時、ビッグサイトで大きな展示会があり、当然姉さんと私は前日から入って設営したが、その帰りのゆりかもめの中で姉さんは驚くような事を言い出した。

彼女は大阪在住のため、その時がレインボーブリッジを実際に通った最初だったのだが、私に「雑誌でこの橋を歩いて渡れるって書いてあったんだけど、西陽と一緒に歩きたいなぁ。伝えておいてくれない?」と言い放ったものである。

私にしてみれば目が白黒状態なのだが先輩の命令だし、何より面白い事になりそうな予感に、あっさり頷いたのは当然だった。

早速次の日ビッグサイトにやってきた彼に、その重大な秘密をそっと伝え、事の成り行きを見守ったのだが、そこは熟練?の2人、周囲に気付かれるように急接近する事などあり得なかった。

しかし私は、当然その後も2人の動向に目を光らせていたのだが、こんな時どこからとも無く登場するのが「噂のチャンネル」である。

彼女は2人の約束など決して知らないのに、その名に恥じない嗅覚で何となく2人が「怪しい」と、あっさり目を付けた。まったくもって恐れ入った活躍ぶりである。

そうこうしている内に「西陽と姉さんが一緒に歩いていた」という噂が、まことしやかに流れた。

まさか本当にレインボーブリッジを歩いたとは思えないが、確かに距離は縮まっているようである。

交際中に本人たちから何か聞いたわけでもないし、勿論私も社会人の、そして後輩の常識として「その後どうなりました?」なんて口が裂けても言った事は無いし、訊いた所で言う筈もない。

ただ、西陽は「今付き合ってる人がいる」という事実を仄めかしたいらしく、核心はぼかしながらも「デートの時は『今日は食事して軽く飲んでホテルだよ』って言う」とか「どんなに彼女が好きでも家庭を壊す気は全くないから、絶対泊まらない」など、あたかも「それがどうかした?」という素振りで、もちろん足を交差させながら話し、さり気なく私にヒントを与えてくれていた。

そして姉さんも東京出張の際、必死で仕事をこなす私に「西陽に誕生日プレゼント渡したいから喫煙室に来てくれるように言ってくれない?」などと、東京出張の目的はそれだと言わんばかりに私に頼むばかりか、まるで「2人は怪しくも何とも無いから喫煙室でやり取りする」という証明に使うように、プレゼントの受け渡し場所に私もいるように命じるのだった。

えっ?その後2人はどうなったかって??それは次回・・次回。

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西陽のコンプレックス

常に自分の、やや時代錯誤な美学を追求する彼は、ある意味涙ぐましい努力家とも言える。

おまけに彼は自分に、男性としての魅力が満載だとも思ってもいる。

「結婚してから付き合った女性は、まぁ10人程度だけど、彼女達はみんな幸せになったなぁ」とか「電車の中で”カッコイイ”って声がしたから、どんな男だと思ってチラッと見たら、女性が2人でこっちを見てて・・」などと、恥ずかしげもなく言いのける自信家でもある。

その為に、当時まだ日本に入荷してなかったカルティエの新作トワレを身に纏い、スーツにも靴にもお金をかけ、細身でタールが低いメンソール煙草を、足を交差させて吸ったりする、超ナルシストなのである。

確かに彼はヘンな男でも何でもなく、仕事も出来るし、女性にも優しく、ユーモアもある。

そんな彼にも、だった1つだけ(・・と彼は思っている)コンプレックスがあった。

ある時、彼が海外出張に行く事になり、旅行会社に提出する書類を書いた時の事だった。

私はそのチェックも仕事だったので、書き漏れがないか見ていたら1箇所だけ空欄があった。

全ての欄を埋めてもらわないとならないので、彼に持って言ったら「あ・・見落とした」とスラスラと書き足したものである。

また、IT企業なのでビッグサイトなどで開催される展示会に出展するのだが、コンサルである彼はもちろん自社システムに詳しいし、人当たりも悪くないので、駆り出される事も多い。

そんな時はお揃いのTシャツを着る事になっていて、解説メンバーにそれぞれのサイズを聞き、買い揃えるのも私の仕事だった。そろそろ種明かしをすると、彼のコンプレックスは身長だった。

どう見ても170cmないのは明らかなのだが、海外出張の書類には堂々と「169cm」と記入し、Tシャツのサイズは「L」だと言い張った。

まぁ誰もそれに文句は付けないが、嘘と言うのはどこかしらから綻びが生じるものらしい。

会社につき物の人間ドッグの結果の話をした時、体脂肪率が少ないのを自慢したい彼は、その紙を私に見せびらかしたのだが、そのすぐ上の欄には「身長 166.7cm」と記入されていた。

また、会社のレイアウト変更の際、パーテーションの高さを測った私は、そのパーテーション越しに話をする彼を、後から見た事がある。

どう考えても相手の席まで行って話した方が楽そうなのだが、わざわざ小難しい話を大きな声で、しかもパーテーション越しにするのも彼の好きなアクションだった。

それは彼の追求する美学に合っているらしかったが、私は彼がかなり背伸びしていたのを見逃さなかった。そしてそのパーテーションの高さは169cmだったのである。

言うなれば彼は「もう少し背があれば俺ほど完璧な男はいないぜ」と心底信じているわけで、でもユニークな人柄故に、彼独自のこだわりがそんなにイヤミになっていないhappyな人だった。

ちなみに彼は、既に登場したある女性と浮名を流した時にも面白い逸話を残したのだがそれは次回のお楽しみ♪

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なんで私が・・・

噂のチャンネルはちょっぴり迷惑な人柄ではあるが、仕事もきっちりこなすしお話好きって以外は、取り立てて悪人でも何でもない。

むしろ彼女は真面目すぎるくらいの性格だった。

A社の仕事は、顧客とプロジェクトを組んで行うためスタンスの長いものが多い。ある営業マンが地方の電力会社の仕事を受注したのだが、その営業マンは自社システムについてまったく無知で、噂のチャンネルがそのシステムの責任者であったので出張同行を依頼した。

それまでにそのシステムを使って作らなくてはならないデータも、その営業マンは全く自分の仕事でないような顔をして勝手に私にまで振り分け、自分はさっさと帰る日々に、まじめな性格の噂のチャンネルは、会社にとって多大な利益になりそうなプロジェクトでなかったら絶対に手伝わないのに・・と、トイレやコピーや給湯室で会う度に、大きな目に怒りを湛え真っ向から怒っていた。

営業マンがさっさと帰るのを尻目に、手分けして作ったデータがようやく出来上がったのは出張の2日前で、噂のチャンネルは彼と2泊3日の中国地方出張に出た。

当然知識のない営業マンは口先で適当な事を言うだけで、プレゼンから質疑応答、今後の打合せ日程まで全て噂のチャンネルに押し付け、5時頃になると夜の巷に消えるらしい。

初日の夜だけ軽くご飯をご馳走になっただけだったと、帰ってから彼女の怒りは「呆れ」に変わり、とにかくこのプロジェクトが成功しそうな滑り出しを喜ぶ事で気を紛らわしているようだった。 しばらくして、フェミニストを自認する営業マンは、噂のチャンネルにお礼をしようと思いついた。

そしていかにも前から考えていた大切な案のように、彼女の耳元にこう囁いた。

「この間のお礼に、今度食事をご馳走するよ」当然彼女が顔を輝かして喜ぶと思っていた営業マンの目論見は全く外れ、彼女は目を怒らせて「あれは仕事ですから私は当たり前の事をしただけです。

仕事のお礼に食事のご馳走とかって好きじゃありません」と言い切った。

こんな時、笑いながら言い訳するほど不適切な反応はないのだが、営業マンはそれをやってしまった。

ニコニコしながら「取って食おうってわけじゃないし、この間のお礼に食事をご馳走するだけだからそんなに大袈裟に・・・」この一言で噂のチャンネルの怒りは頂点に達した。

「何で私が妻子持ちのあなたと食事をしなきゃならないんですか!!!」 これには流石の営業マンも二の句が告げず退散するほかはなかった。

まったく、その行動とは正反対に、驚くほど「固い」噂のチャンネルの性格が現れたひとコマだった。

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噂のチャンネル

大抵の女性はワイドショー的なネタが好きなものである。

そしてどこの会社にも必ず1人は、どこでそんな情報を仕入れるのか??という程様々な噂話について、見てきたように詳しい女性がいるのである。

当然、この会社にもかなりハイグレードな「噂のチャンネル」が存在した。

彼女はなかなかハッキリ顔の美形で見た目はまぁまぁ上クラスだが、とにかく噂話に目がない。技術部に所属している彼女は、かなり忙しそうでマジメな仕事ぶりだが、昼休みになると本領が発揮される。

「噂のチャンネルチーム」が寄り集まって、会社のミーティングスペースで繰り広げられるランチは、その話題の100%が噂話か芸能人ネタで、お互いの情報交換に余念はなくそのディティールを繋ぎ合わせると真実が見えてくる・・・と彼女達は信じて疑わないので噂を繋ぐ細い糸を少しづつ手繰り寄せようと必死になっている姿は恐ろしくも滑稽である。

以前「じーじ」と「おぼん」が不倫関係だと書いたが、当然このテの話題は彼女の独壇場で、まるで見てきたように詳しく、意気揚々と語るのを、何よりのストレス解消法としていた。

本人達は絶対言う訳のない「同棲」については、場所がみなとみらい付近、部屋は2つでカーテンは花柄、週末だけ同棲していて、時々「おぼん」が手料理を振舞っている・・・などなど2人が同棲している部屋に招待でもされない限り分からない内容について自信満々で語るのを周囲の人たちも、真偽のほどはともかく、間違いなく面白がっていた。

このような情報を集めるために、彼女は仕事を素早くこなし、女王様に「猫娘」とあだ名を付けられたほど大きな目を出来るだけキョロキョロし、どんな細かい情報源も見逃すまいとする。

彼女のようなタイプは、何となく「臭い」ところを嗅ぎ付けるのに警察犬並みの才能を発揮し見事に真実に辿り着く(と本人は思っている)。この標的になった人こそ災難で、常に監視され、本当でない「きわどい」話を、さも本当のように撒き散らかされる。

そしてもっと災難なのは、噂の出所を聞かれた時、名前が出てしまった人である。

「噂のチャンネル」の名誉の為に付け加えると、彼女はちょっぴり好奇心旺盛過ぎるきらいはあるがイイ人である。

そして元々マジメな性格なので仕事はきっちり素早くこなし、浮かせた時間で趣味である情報収集をして生きがいを保っているのだ。

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化粧水_偽りの幸せ

新婚の浮かれ気分も長くは続かず、ヘタにいい男と結婚したばかりに、ただでさえ人より深い猜疑心に益々拍車がかかっていった。

普段から悪い顔色は、グレーの濡れ紙を貼り付けたように表情がなくなり、それでもいい人だと思われたい、私は幸せな人妻よ・・・とアピールしたいという意識が働くのか明るく振舞っているのが哀れを誘ったが、知らない間にいつもより目が鋭くなり一層不気味さを増していくのは自然の成り行きだった。

M氏と化粧水の新居は、M氏が当てた公団住宅で、立地は埼玉副都心からバスで20分と言う、かなり地味なものだったが、その分間取りは広く自然を愛するM氏が喜ぶような緑多い土地だった。

「新居は三軒茶屋がいい」などど、都会に憧れる田舎者の典型的な夢を抱いていた化粧水にしてみれば、結婚までは自分の思い描いたストーリー通りだったが、ちょっぴりガッカリな立地だった。

でもそこは誰よりも計算高い化粧水、この立地条件を自分の失敗しかけている結婚生活を隠蔽するアリバイに利用した。

結婚して暫くすると「忙しいから」という理由で会社から電車で10分くらいの都心にマンションをこっそり借りた。

事実彼女は残業が多く周囲の人は可哀想に思いはしても何の疑いも持たなかったがここに彼女のズルさが隠されていた事に気付いた人は少なかった。

化粧水の説明では、彼女が忙しくM氏も出張が多いので、遠い新居に帰ると、すれ違い生活になってしまうため平日は都心で生活しているの・・・という尤もらしいものだったがもちろんM氏との関係にヒビが入り別居していたのだった。

そのマンションは新居への通り道にあったが、彼女は会社から支給される交通費はしっかり遠い新居までの分をもらい、幸せのアリバイと余剰金という図々しい2本立てをしてのけていた。

人生最大の危機というべき離婚が目前にあっても、会社から交通費を掠め取るという芸当をあっさりしてのけるあたり、育ちの悪さと言うのは隠せないものである。 これは数年前の出来事で、その後どうM氏を騙したのか何とか元の鞘に収まったが、若くない彼女が人一倍正義感の強いM氏を、一生繋ぎとめるに「子供」が一番なのは、誰にでも容易に想像がつく。

当然彼女は張り切って「不妊治療」に勤しみ始めた。

化粧水独特の気持ち悪さで、隠しているように見せかけてさり気なく自慢しながら続けられたそれはまたもや彼女の幸せアピールに一役買った事に、彼女自身が最も満足していたのは言うまでもない。

その精神の安定が、幸か不幸か「妊娠」という事実を引き起こした。

祝福の言葉を浴びながら化粧水が「これで一生安泰」とほくそ笑んでいたのに気付いたのは私達だけだったかもしれない。

段々大きくなるおなかを大事そうに抱え、M氏もとっても喜んでいるの~などと言いふらす彼女は今度はママになる幸せを噛締めている妊婦を、意気揚々と演じ始め、これまたまんまと会社初の産休に入った。

そして週に一度「現状報告」として電話で自慢話を撒き散らすのを楽しみにしていた。

もちろん組合の規定通りの「出産補助金」を手にしたのは言うまでもない。

今は復職しているらしいが、これほど計算高く不気味で恐ろしい人を私達は知らない。

あ~恐るべし化粧水の人生設計・・・。

今後の展開も「怖いもの見たさ」である。

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化粧水vs姉さん

まんまとM氏を陥れた化粧水は、結婚のお知らせハガキをセピア色にしてみたりしてすっかり「新妻」の地位を満喫しているようだった。

ストーリーが展開する前に、新たな登場人物について説明する必要がある。

「姉さん」は大坂支店勤務で、会社でもかなり古株の嫌われ者だった。

関西にいる上、根っからの怠け者のようで滅多に電話にも出ない、仕事上の約束も守らない、自分がやりたいと言い出した仕事を、もっともらしい理由をつけて途中で放り出し新しい仕事をしたがる、年の割りにイケイケな格好をする・・など噂好き女性陣の憎まれ役になっていた事は当然だった。

ところが勤務年数と年齢で簡単に決まる年俸は、前年度より下がらないという、ありがたく時代錯誤な会社の決まりでおかげで、かなりの高給をもらっていると専らの噂で、それが女性陣の怒りに火を点け、更に嫌われるという構図だった。

このテの女は必ずと言っていいほど男好きと決まっていて、彼女が売り物にしている「華奢」が、女性の最大のチャームポイントだと思っている男にはモテる。

化粧水の罠にはまったM氏は、当時大坂に大きなプロジェクトを抱えてて元々関西出身の彼は、出張の度に姉さんと食事をしてたらしい。

まぁこの先はお決まりのパターンだが、離婚の慰謝料に受け取ったという、かなり豪奢なマンションに1人暮らしをする姉さんが、M氏を手玉に取るのに時間は掛からなかった。

私は姉さんと喋る唯一の女性社員だったのだが、以下この「事件」について直接聞いた話である。

ある土曜日、姉さんは友達と飲みに行き11頃には帰宅し早寝をした。3時頃電話が鳴ったのでビックリして取った途端、怒りまくった化粧水が「このドロボー猫!」とか「いるんでしょ?出しなさいよ!」などなど、最近は2時間サスペンスでも聞かれなくなったような台詞を立て続けにまくし立て、姉さんが相手にしないと何度でも掛かってきた、あの人のあのヒステリーは只事じゃないと大笑いし、全くの濡れ衣が迷惑という素振である。

化粧水に負けず劣らず男好きで図太い神経の持ち主の姉さんが、M氏と何事もなかったとは全く信じられない話だ。

1人も味方のいない姉さんも可哀想だが、超円満夫婦を装っている化粧水は、その内実を誰にも言える筈もなく、幸せな妻を演じ続け、益々顔色が悪くなり不幸が張り付いたような暗さは、益々濃くなっていったのだった。

これは不幸のエピローグに過ぎないのだが、続きは次回・・・。

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化粧水の恋愛模様

何とも不気味な「化粧水」には、驚くべき事には家族がいたりする。

彼女が最初に配属になった技術系部署は、その当時、現在の社長「女王様」が仕切っていてどういうわけだか何かと「化粧水」に目を掛けていたらしい。

こと恋愛においては化粧水もかなり腹黒だが、女王様はその上を行く、と言うか化粧水如きが逆立ちしても太刀打ちできる相手ではない。

つい最近まで永らくトップコンサルだったS氏(もちろん妻帯者)と同棲していたが気になる男には全て手を出すマメぶりは健在だし、重要取引先のキーマンには安ホステスのような目線と態度で接するのだった。

当時営業部にはS氏の「いとこ」M氏がいて、S氏と女王様は、2人の側にいるM氏と化粧水を引き合わせて結婚させようという、冗談にしては怖すぎるプロジェクトに夢中になった。

M氏は椎名桔平をちょっと小柄にしたタイプで、性格は曲がった事が大嫌いな、一本気で体育会系、そして優しい気遣いの出来る人だったが、何を間違ったか化粧水と付き合ってしまいその経緯を考えれば、それは当然「結婚を前提とした」ものだったからマズかった。

M氏は優しい性格から、既に社内で交際が口の端に上っているので別れるのは化粧水に可哀想だと思っているらしかったが、これこそ化粧水の思うツボで、割とイイ男で優しいM氏を計算高い化粧水が手放すわけもなかった。

「私のために無理をしないで」的な言動が、M氏をがんじがらめにするのを充分過ぎるほど見抜いていた化粧水は、本当にそう信じているように耐える女を演じ切り、遂に結婚と言う第一の関門を乗り切った。

さてさて、ここからが化粧水の本領発揮なのだが、この先は次回のお楽しみ☆ ふ~・・・M氏に幸多かれ・・・

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化粧水

パン!パンッ!パン!パンッ!パン!パンッ!パン!パンッ!それは毎日13時過ぎ頃になると必ず聞こえてくる、かなり早いペースの奇妙な音だった。

何だろう・・・?と思う間もなく、その発生源に遭遇したのだが、それが女子トイレから聞こえる、化粧水をつける音だったから驚いた。

音の主は、九州出身だからと言うわけではないと思うが、色黒でお世辞にも肌がキレイとは言えなかった。

にも拘わらず、本人はかなり若いと勝手に納得しているようだったがどう見ても実年齢より上に見えてしまう肌の持ち主だった。

一般に肌が白くキレイなだけで、外見が若く見えるものだが、彼女の肌には「艶」というものが全く無く、ガサガサしてるのが生活を表しているようで哀れだった。

この「化粧水」、社内では何故だか優しくていい人と思われてるらしいが、実は会社一の腹黒女で、人の噂に探りを入れてそれを流布するのが大好き、お互いの上司同士の引き合わせで社内恋愛で結婚したのが自慢なのに、立派に不倫もしてたというツワモノであった。

どうしても彼女の外見的なチャームポイントを探すとなると、かなりこじ付けではあるがパッチリおめめという事に落ち着きそうだが、この目が人に探りを入れるときの輝きほど不気味なものは無かったし、どんな時でも決して目だけは笑わないのが常だった。

そんな彼女は「私ってバイリンガルだし可愛いし仕事も出来るけど、結婚もしててみんなの人者・・・」と、あるとあらゆる美辞麗句を自分に当てはめているようだった。

以前登場した「おぼん」くらい見え見えならまた可愛げもあるが、彼女は「私なんて・・・」と常に控えめを装い、影ではとんでもない事を仕出かしながら周囲の殆どの人がそれに気付かないように行動するという、何とも小憎らしい女だった。

とにかく、少なくても私達は、彼女と目が合うだけで背筋に冷たいものを感じるという、何とも言えない恐怖を彼女に見出していた。

だがそれに気付いてる人は稀なのが尚更「化け物」的なおどろおどろしさを彼女に加えていると考えざるを得なかったのは彼女の「いい人ぶり」をいつも見せられていた私達には自然の成り行きだった。

こんな「化粧水」の結婚生活や、唯一笑えるところについてのエピソードはまたのお楽しみ☆

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露出狂vsドーム女

いかにも安っぽい、田舎者の代名詞のような「露出狂」がコンサルの一員として外出するようになって暫くした頃、彼女がかなりの男好きだという噂が立ち始めた。

なんでも朝、重役出勤すると、それに対するお詫びや言い訳は全くない代わりに 「昨日飲んで帰ったんだけど、朝起きたら知らない男が隣に寝てたのぉ」とニコニコ話すのが通例となっているそうなのだ。

当然、最初は周囲の男性陣も面白がっていたが、うんざりするのは時間の問題だった。 どうやら彼女は、自分が美人だからモテる、大人のイイ女は火遊びの1つや2つ・・・というまったく意味不明な解釈をしている自分に酔っている様子である。

その彼女も男性陣に相手にされなくなると、何としても自慢するターゲットを見つけるのに真剣になった。

そして「同じ穴のむじな」のドーム女に目をつけるのに時間は掛からなかった。

前にも言ったが、ドーム女は自分のファンを集めたら東京ドームが埋まるとか、電話1本で男が50人集まるとか、露出狂に負けずとも劣らない根拠のない自信を持ったバカ女だった。

まずい事にこの2人、同じコンサル部に属していて席も近く、話す機会も多い、しかも吸ってる煙草まで同じ、そして「私の方が上」とお互いが相手を見下しているのも同じだった。

面白い事に、煙草を吸いたくなる時間帯と言うのがあるのか、喫煙室という場所は無人かたくさんの人が集まっているか、どちらかの事が多い。

当然この2人もかち合うことが良くあったのだが、お互い周囲の人を、自分の男話自慢に巻き込もうと必死である。

先ず先輩であるドーム女が、ブランドものプレゼント攻勢話や、言い寄ってくる男が全員医者か弁護士だと言う、全く信憑性のないセレブ自慢をニコリともせず話し出す。

まるでそんな事はどうでもいいの・・・誰か私を心の底から愛して欲しいの・・・と言うような風情を装ってはいるが、昔はお手伝いさんを数人使い、お兄さんは某私立お坊ちゃん学校に幼稚舎から通っていたという経歴もさり気なく披露する彼女はお金持ちに強烈な憧れを持っているのが丸分かりで、哀れだ。

負けじと露出狂が、飲みに行った時知り合った男は○○会社の社長だとか、マンションをいくつ持ってるだとか、田舎者が泣いて喜びそうな話題でみんなをもてなし、ここでも安っぽく品の無さをアピールする。

挙句の果てには、その男が朝まで餌食になったという、全く想像したくない秘話まで、悪気のまったく無いニコニコ顔で話すのが常だった。

こうして広くもない喫煙室は穏やかながら修羅場と化し、一休みしようと集まった喫煙者達は、目を上げず、2分くらいで、もくもくと煙草を吸い終えるや否や、そそくさと自席に戻る以外、この妙な自慢大会から逃げ出すテはなかった。

そしてギャラリーがいなくては話しても面白くないのか、2人以外いなくなった喫煙室ではさっきまでみんなが望んだ静寂の時を迎えるという、何とも皮肉な結果となるのであった。。。

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露出狂の仕事style

世の中にはいろいろな種類の女性がいて、それが男性の生きがいの1つになっていることは確かだか、中にはまったく迷惑な勘違い女もいるものである。

彼女は社内最年少25才。

誠に勝手な話だが、海外留学経験を持つバイリンガルで実家は沢山の不動産を所有するお金持ちという触れ込みを聞けば、いやでもみんなの期待を集めるだけでなく、お嬢様のイメージを持つのも当然だった。

ところが入社した彼女は、見た目はいかにも運動不足でぷよぷよ、お金持ちとは思えないこれでもかっ!という安っぽい服の数々、そして飽くまでも下品な行動・・・。

全然悪い子じゃないので、何とかいいところを探そうと頑張れば頑張るだけ、私たちも疲れてしまうという悪循環なタイプだった。

彼女が徐々に仕事に慣れてきて、誰かについてコンサルとして外出するようになったある日。

誰もがそのミーティングはとても大事なものと理解していたその日、出社してきた彼女を見て仰天しない人はいなかった。

彼女はその姿が、その重大なミーティングに有利に働くと信じているらしかったが、誰がどう見ても仕事には全く相応しくない、露出狂的な姿だった。

胸元がぱっくり開いて、あまりありがたくない彼女の胸が丸見えな仕組みのペラペラのブラウスは困った事に身体にフィットするタイプ、決して細いとは言えない立派な足がゴロゴロ出る丈のスカート、彼女の体型にはまるでそぐわないピンヒール、そしてバッグは布製で肩から掛ける大振りなものである。

その姿で意気揚々と出社しミーティング前の打ち合わせをしている彼女は、また何か勘違いしているようで、大袈裟に足を組み、眉間にシワを寄せて何か語っていた。

そして「行き詰った」という良く分からない理由で喫煙室に行き、さも会社の運命を背負って立ってるという憂いを含んだ瞳を遠くに泳がせ、Salemを吹かすのが常であった。

その後も、その安っぽい雰囲気は延々と続いた。

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おっかさんVSケチ男

家族の為に、ケチケチな毎日を送っている営業部長ケチ男だが彼の名誉のために言っておくと、彼は都心の一等地に土地や賃貸ビルを持っていて、大抵の人より金持ちである。

でも彼の心の拠り所である家族旅行や家族での食事は、健保で取れる格安のホテルやレストランonly、しかもホテルに至っては他の人が当たるとダメ元で「譲ってくれない?」とニコニコ聞きただすのが常である。

ある時、ケチ男とおっかさんという2大ケチケチ人間に小さな諍いが起きた。

お年賀で使う有名おせんべい屋さんがオフィスの真ん前にあるのだが沢山買ったので、何缶かもらえるチケットのおまけが付いたらしい。

そのテのものは総務であるおっかさんの管轄なのだが、実は彼女も転属したばかりで、そのチケットが引き出しに入っているのを見逃していた上に有効期限はとっくに過ぎていた。

その事を私に話してたおっかさんの言葉を、たまたま通り掛ったケチ男が小耳に挟んだので大変だった。

彼は2ヶ月も前に切れた有効期限など歯牙にもかけず「半分でもくれと掛け合ってくる」と、年収1500万の営業部長らしからぬ事を口走りおっかさんにチケットを渡せと迫ったのである。

流石のおっかさんもこれには閉口したらしく「そんなみっともない事止めて下さいよ」と、聞きようによっては彼女らしからぬ発言をしたのだがケチ男は何としても引き下がらない。

結局、チケットは捨ててしまったという、何とも陳腐な言い訳で切り抜けたのだが、この言い争いに費やした10分ほど、無駄な時間を私は知らない。

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ケチ男の日常

おっかさんのケチぶりは前述の通りだが、その彼女も舌を巻く「締り屋」がケチ男である。

社内では女王様に次いでNO.2の地位を誇り、まぁまぁやり手の営業部長、しかも噂によればその年収は1500万は下らないと言う。

外資系IT企業の営業部長である彼は、恐ろしくアナログなこだわりを持っていて、とんでもない悪字でありながら手書きが好きらしく彼のアシスタントも兼ねていたKは、その字がびっしり綴られたメモを入力しなければならない羽目に陥ったものである。

しかしどんなに考えて入力しても、必ず添削される誤入力があるのは彼の字のせいなのだが、その添削するペンがふるっている。

今どき、トンボの赤鉛筆を使うのだ。

それも短くなった2本の赤鉛筆のてっぺんをセロテープでぐるぐる巻きにした代物である。

昔よく見かけた「両側が鉛筆」というヤツだ。

しかも彼の尊敬すべきところは、それが手にすっぽり収まって見えなくなるまで使い切るという節約家ぶりである。

また自分宛に来た手紙の切手から、消印がはみ出ているのを発見するとさも得をした!

という顔をして、大きな手でそーっと切手をはがす様は微笑ましくもあり、情けなくもある光景としかいいようがない。

もちろん再利用しようと言う魂胆だが、大臣並みの環境保護ぶりである。

当然ランチなんていうものは、いい時で会社から2~3m先のほか弁、しかも50才の働き盛り?の彼は、脂っぽいものが大好き。

日々ロースカツやから揚げなど、一目で身体に悪いと思われるものを5分未満で頬張っている。

ちなみに彼の自慢の1つは「奥さんが栄養士」というものなので、だったら奥様にお弁当を作って頂いたら如何ですか?と進言した私に、彼は憂いを帯びた目で「子供たちの分は好きだから作るけど・・・って言うんだ」と洩らしたものである。

そんな扱いをされても家族の為にケチケチしている彼を、一瞬だけ可哀想だと思った。

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おっかさん送別会に行く

おっかさんの自慢の一つに「送別会を欠席した事がない」という素晴らしいものがある。

しかしケチなおっかさんは、ある日の送別会で途中退席するからと、会費を払わないという暴挙に出た。

何でも駅から自宅までのバスが早く終ってしまうのが理由らしいが、「ちょっと顔出して食べずに帰るから」というexcuseを振りかざし、一番乗りで会場に姿を見せた。

しかし、どうだろう!彼女はちゃっかりメイン近くの席に陣取り、さっさと先付けからパクついてるではないか!!

しかも自分は人数に入っていないのに、おしぼりが足りないだの、座布団が少ないだの、もう一膳箸をよこせだの、お店の人に交渉し始めた。 幹事の私はじめ、事情を知ってる者は、ただアングリである。

少し様子を観察していると、バスの話は無かったかのように、来る料理を全て平らげ「○○さんのが足りなかったから、私のを分けてあげた」という優しさまで見せ始めた。

誠にもって、恐れ入った度胸である。

周囲の人達も流石にムッとしたようで「会費集金してきなよ」と私に耳打ちし始めた。

だが、近くの席の人達といかにも楽しそうに談笑しながらタダ喰いを繰り返す彼女に話しかけるスキは、微塵も無い。

そうこうしているうちに、段々お開きの時間が近付いてきて焦る私を尻目に、彼女は何を思ったのか私の席にやってきて、さも細かいところに気付く女性を気取り「私も会費払おうか?」と言い出した。

まったく驚くべき大胆振りである。

そうして終バスがなくなってしまう筈の彼女は、間違っても彼女の分ではない料理を片っ端から食べ、飲み放題に入っていない別料金のお酒を注文し(もちろんこの代金はみんなから集金した中から支払われる・・・)、送別される人の胴上げまでちゃんと見て楽々と帰ったものである。

次の日、何事もなかったかのようにお菓子を溜め込むおっかさんに、誰も終バスに間に合ったか聞ける人はいなかったのは当然であった。

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おっかさんの晩御飯

カビ付きお菓子で会社の人々に恐怖を与え続けるおっかさんは一応主婦なので、週末には夕飯を作るらしいのだが、これも当然の仕儀らしい!

メインが魚の時は、彼女と結婚した事で周囲から「勇気ある男性Best 10 of the worldに入る」と陰口をたたかれているご主人が「今日は魚が安い日だね」と言うらしい。

彼女の答が振るっていて「そう、100円だったの」・・・ 家計を預かるおっかさんは「切り身は100円以下じゃないと食べないの~」と自慢げに会社の人々に言い放つのが常である。

余談だか、ケチな人の常かもしれないが、彼女は会社のお金は平気で使う。

総務部に所属するおっかさんは、切手を買っておくのも仕事のうちだが、ここでも彼女は一流の気遣いを見せ、メルモちゃんやドラエもん、ガッチャマンなどの可愛い記念切手を買い込み、自慢気に女性社員に見せびらかす。

理由も振るっていて「こういう切手だとお客様の目に止まりやすいから請求書を必ず開いてくれるでしょ」・・・・ 見れば柄もさることながら、形も丸や星などで、とてもじゃないが社用で使える代物ではない。 まったくありがた迷惑としかいいようのないおっかさんの、勘違いまっしぐらな気遣いに関係者はただ黙って頷くしかないのである。

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おっかさんのおやつ

おっかさん・・・何と言う暖かい響きだろう。

子供の事を常に考え、優しく慈愛に満ち、ふくよかな女性。こんなイメージ・・・ ところがこの会社の「おっかさん」は、ただの迷惑なおばちゃんだった。

おばちゃんらしく、彼女は会社の裏事情に明るく、そのための情報収集が主な業務かと思えるほど社内営業に忙しいので、当然居て欲しい時に席にいたためしはない。

ちょっとした話を小耳に挟むと、相手の迷惑は全く関知せず詳細を聞くまで、そばを離れない徹底振りである。 そんな「おっかさん」が席にいる数少ないチャンスが、おやつタイムだ。

3段ある彼女のデスクの引き出しの2段目は、お菓子の引き出し。

これ以上ムリというほど詰め込まれていて、ここに入らない、比較的新しいものがデスク上に放置される事となる。そしてちょっとしたお礼に彼女はこの宝物を、古い順に活用する。普通、特に女性はお菓子をもらうと嬉しいものだが、おっかさんの手から渡されるお菓子は、まったく迷惑極まりない。

なぜなら大抵は青カビのおまけつき、状態が良くても期限切れという、世界遺産並みの古さなのだ。

別に彼女は「古物商」でも何でもなく、単に軒並み外れた「ケチ」なのだ。

そして、そのありがた~いお菓子をもらった、選ばれた人々の災難はまだ続く・・・そう、おっかさんはそのお菓子の感想を求めるという念の入りようなのだ。

この彼女が下を巻くケチケチおやじが社内にいるのだが、このお話は後々のお・た・の・し・み

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彼の演出

営業やコンサルなどと言う職業の人は、大抵会社にいないものである。

シニアコンサルという肩書きの彼も毎日忙しそうに、身体に似合わないほど大きな重いカバンを持って出かけていく。

その後姿は「コンサルはやりがいがあるけど忙しいぜ~。

やっぱりオレが出て行かないとダメだな」と言わんばかりな自信に満ち溢れている。

その日は誰でも知ってる超大手ビールメーカーでのプレゼンが、その後の仕事の行方を決めるような大事な日だったので、いつもにも増して彼は自信たっぷり。

まぁ彼のプレゼンの評価は高いので大丈夫だろうなぁ・・・とみんなは彼を送り出した。

仕事が終わりメーカーから出た彼は、弾んだ声で電話してきて成果を報告。

会社としては喜ばしい事なので、何となくみんな彼の帰りを心待ちにしていた。 夕方。

彼が帰ってきてみんな固唾を呑んで彼の第一声を待った。

自分のプレゼンが会社に多大な利益をもたらす事になりそうだし、そんな自分をみんなは敬うような、憧れのような視線で待っている・・・。

でも彼は考えた。

帰った途端に、さも嬉しそうにはしゃぐと、自分の価値が下がりそうだ・・・。

そうだ!あ~その事??そんなに大騒ぎするほどでもないよ・・くらいのスタンスでいこう!

そして大きな窓に面した自分の席に向かう彼は「西陽が眩しいぜ~」と言いながら例の重いバッグをデスクに置きながら、大きく伸びをした。

小柄な彼が西陽に向かって伸びをしている様は、まったくもって笑える光景で彼が練りに練った演出は、、彼の功績よりも面白さを際立たせる結末となった。

実は彼はとってもイイ&本人は全く気付いてないが感覚的に面白い。

小柄なのに女性と話す時は、壁に手を掛けて身体をナナメにしてみたり、外人をみかけると急にカタカナ用語満載の会話になったり、パープルのYシャツにソフトスーツという今時珍しいバブリーな服装をしたり、タバコに火を点ける時も小首を傾げて足を交差させる徹底振りである。

周囲はどうあれ常に彼的な「カッコ良さ」を、涙ぐましい努力で追求するタイプなのだ。

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着ぐるみったら・・・

彼は胸を張って言う 「僕は眠り病なんです」と・・・。

それは彼が入社してすぐ始まった。かなり高い学歴とスキルを保有する彼は、鳴り物入りで入社してきた。

そしてそれは、会社の人々から一目置かれる筈だったが彼が注目を集めたのは皮肉にも高学歴や素晴らしいスキルではなくその席から聞こえる「いびき」だった。

自称眠り病の彼は、出社すると「今のうちに決めておかなきゃ」とでも思うのか始業10分後くらいには、本人だけが一方的に仲良しと勘違いしてる近くの席のIさんに「今日のランチは何にする?」と真剣な目線で訊くのが日課だった。

不思議だなぁ・・・と思う間もなく密やかに響き始める、いびき。

しかも本気で寝てる証拠には、顔はピンク色に上気し、うっすら寝汗さえ浮かべている。

何とも優雅な朝の風物詩である。

サラリーマンにあるまじき行動だなぁ・・・と感心してると、コツコツと社長の靴音。

するとどうだろう・・・今迄夢の中に居たはずの「着ぐるみ」がさも今迄熱心に仕事に集中してたかのようにIさんに近付き「さっきの件だけど・・」と一瞬で仕事モードに切り替わる。

まさにサラリーマンの鏡である。

しかし、流石に周囲の目を誤魔化すのにも限界があり彼の席から、いびきは消えた。

最近よく席を外してるなぁ~と気付いた頃には、男性陣の何人かの口の端に彼の新しい噂が昇っていた。

なんと彼は、トイレの個室という、新しい指定席を確保し「眠り病」と闘っていたらしいのだ!!トイレに入った途端に、かなり大きないびきが聞こえるというのも何とも暢気な会社のひとコマである。

そして彼の企業人としての1日は5時半きっかりに終わり、その後は眠り病も良くなるのか夜の巷へと消えていく・・・次の朝もまた例の日課が繰り返され、楽しいランチが終るとトイレの個室が病室になる仕掛けなのであった。

ちなみに彼の「着ぐるみ」というあだ名は、当然その体型からきているのだがその原因は、毎晩食べる宅配ピザのおかげ・・・。

彼は何軒かの宅配ピザ屋さんの特徴を女性社員に声高に、しかも自慢げに説明し「今度ピザでも一緒にどう?」と訳の分からない誘い文句を、着ぐるみのお気に入りの女性にかなり本気で言っていたらしいが、彼女は影で「あんな後にファスナーのついてそうな人、イヤよ」と大笑いしていた。

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ドーム女登場!!

ある日の喫煙所での事・・・。

ドーム女「このタバコケース(FENDI)、誰にもらったんだっけなぁ?!」

A子「ふぅ~ん。それってもらい物なんだぁ~?!彼氏からのプレゼントじゃないの?」

ドーム女「違うのぉ。私が欲しいって言ったら、周りの男達がすぐに買ってきてちゃうから同じのがいくつもあるのぉ。」

A子「そ・そうなんだ・・・。」

ドーム女「そうそう!お風呂の電気が切れちゃったんだけど、誰に来てもらおうかなぁ。」

A子「そのタバコケース買ってくれら人に来てもらえば?!」

ドーム女「私がちょっと電話すると50人くらい男が集まっちゃうんだぁ」

A子「ドーム女ってすごいねぇ!そんなに、周りに助けてくれる男がいるんだぁ?!」

ドーム女「私のファンを集めたら、東京ドームがうまるんじゃないかなぁ??」

その場にいた、女はもちろん、男まで苦笑。そうですか・・・・。東京ドームがうまるんですか。

じゃぁ、今すぐにでも、うめてください。本当にその男達は、あなたのファンなんですか?
可愛げのない勘違い・・・というより性悪女である。

後日、部内の日帰り旅行の時に、ドーム女は1泊2日用のヴィトンのカバンを持ってきた。

A子「ドーム女、そのカバン高いんでしょう?!それも買ってもらったの?」

ドーム女「値段知らないんだけど2つ持ってるの~。私が、欲しいって言ったら、2人が買ってきてくれちゃってぇ。ふぅ~ん。。これって高いんだぁ・・・ブランドものの事は分からないなぁ・・・。ちょっと私が何かすると、周りの男がいろんな物買ってくれちゃうからねぇ。え??みんなは違うの?」

A子「・・・」

えっ?!ドーム女は、そんなに可愛いのかって?!それは、後のエピソードまで、ひ・み・つ。。。

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じーじとおぼん

登場人物でも紹介したが、じーじとおぼんは勘違いぶりのカテゴリーが同じ「似たもの同士」である。

おぼんは、世の中の男全員が自分を見ている、みんな私を狙ってるのね・・と思っている女である。

かつて、じーじとおぼんは付き合っていた。。。

おぼんは、会社でじーじと親しく話している女を視界に捉えると、カツカツとハイヒールを鳴らして近付き、難しい専門用語や横文字を駆使し仕事の話を始める。

そう、彼女は自分は仕事も完璧にこなす「ウルトラウーマン」だとも、勘違いしているのだ。

そして、じーじと話した女に対して、ひどく冷たい、レベルの低いイジワルをするのである。

よくありがちな、女のみにくい嫉妬だが、なんとおぼんは本気で妻帯者のじーじに惚れているのだ。

2人は誰にも気付かれていないと思っていたが、みんなは2人の奇妙なベタベタ感を、敏感に感じ取っていた。

朝も夜も「時間差攻撃」で出社・退社を繰り返す2人を、ある日、会社の物好きが尾行したら道玄坂の円山町界隈で見失ったらしい。

またある朝、いつも通りの「時間差出勤」で、じーじがおぼんより少しだけ前に登場しコートをハンガーに掛けた。

直後に出社したおぼんは、いそいそとコートのほこりを取ったり綺麗に整え、まるで新妻のような有様である。

誰が、どう見ても付き合っている事があからさまの行動をしでかしながら、誰にもバレていないと根拠の無い自信を持っている2人なのである。

ハイヒールとタイトスカートで「出来る女」を気取っているおぼんは、誰よりも【女の子ちゃん】な性格なのである。

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じーじ本屋での出来事

じーじは、とにかく女好き・・・というより、周囲に居る女みんなが自分を見てると勘違いしている男である。

ある日曜日の午後じーじは、常にそうであるようにその事を意識しながら本屋で立ち読みをしいた。

すると本棚の隙間から同じく立ち読みをしていた知らない女の、ねばっこい視線を感じたのでお茶したと会社で自慢していたそうな。

真偽を確かめるべくさリサーチしたところ、じーじは「見知らぬ女に見つめられてたので、女に対する礼儀で『お茶でもいかがですか?!』と誘った」と、いつもの事さ・・・それが何?とでも言うような顔で言ったらしい。

本当に、お茶したらしいのだが、本屋での見知らぬ女性は、本当にじーじを見ていたのだろうか?未だに謎である。

そして何よりも、背が高いだけが取柄の、マンガのキャラクターに似ているじーじの、あの自信は、いったいどこから来るのか、まったく謎である。

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女王様 on the train

とにかく男好き!!事業部長の地位を利用して、好みの男を次々と自分と同じ仕事につける(出張付き)。

ある日のこと、新人の歓迎会に向かう電車の中。

まったく混んでいない東西線でつり革にもつかまらず、ほんのちょっと揺れただけで、「キャーァッ!」と叫び、じーじにしがみついた。

女王様の奴隷であるじーじは、「あぶないから、つかまって下さい」と言いながら腕を出した。

まったく感心するくらいのフェミニストぶりである。

歓迎会の席は、当然じーじの真ん前。

事業部長なので女王様中心の勝手気ままな「女の子トーク」炸裂。

女王様「今度の土日、スキーに連れてってぇ~♪絶対よ」(・・と小首を傾げてのお誘い発言)じーじ「じゃぁ、皆で行きましょう!」(・・・と相変わらずの奴隷発言)こんな感じで延々と好みの男(この場では、じーじ)を誘う女王様と、奴隷であるじーじのやり取りが続くのを、周囲の社員はただ黙って聞いているという不思議な光景が繰り広げられるのだ。

しばらくすると、仕事の忙しい女王様は「じゃぁ、私は仕事があるので、これで!」と急に仕事の出来る女っぷりを発揮している自分に酔いながら、新幹線で出張先に向かったのである。

やれやれ(^_~;)要するに、『私は仕事も出来るのに、仕事を離れるとこんなに可愛い1人の女なの』というアピールと自己満足の上に成り立ってる、女王様の人生なのだ。

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登場人物

彼らは、会社を支えている愛すべき勘違いな人々である。

・女王様
 当時、事業部長。彼女が1日仕事をすると、50万の収入になる。後に、社長となる。

・おぼん
 彼女のすべての行動は、勘違いの上に成り立っている。

・じーじ
 男版、おぼん。当時女王様のお気に入りであった。

・ドーム
 彼女のファンを集めたら、東京ドームがうまるらしい・・・。

・西日
 見た目は、絶対日本人だが、本人はアメリカ人かイタリア人だと思っている。

・おっかさん
 とにかくケチ!かびのはえたお菓子も捨てない。この会社の七不思議のひとつで、彼女は何故か既婚者である。

・化粧水
 何故か一部では、いい人だと思われているが、社内一の腹黒女。

・うわさのチャンネル
 社内の噂ならなんでも知っている3人組の中心人物

・姉さん
 大阪支店勤務の、超~嫌われ者。おまけに、男好き

・食いだおれ
 とにかく臭い!そして、高学歴のお馬鹿さん!

・バカエもん
 自分の才能に妙な自信を持っている。今時、肩からセーターをかけている。

・露出狂
 典型的成金の娘!客と会うのにも、露出している。

・着ぐるみ
 自分は眠り病だと固く信じて眠っている。

・ケチ男
 おっかさんもおどろく、ケチぶり。しかし、都心の一等地に土地を持っている。

・私達(普通の人々)
 K&Y

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